
主な受賞暦:
プチョン国際映画祭:正式招待
New York festivals:入賞
東京インタラクティブアドアワード:銅賞・入賞
常盤司郎さんは、フリーで活躍する映像監督。映画「落下距離・百三十センチ・鳥」(プチョン国際映画祭正式招待作品)、映画「99%の自殺」(主演・板尾創路)、サザンオールスターズ「FILM KILLER STREET~Director's Cut~」といった作品をはじめ、TVCM、PV、アニメーションなど、数多くの映像を世に送る一方で、井上陽水やストローといったアーティストのCDジャケットデザイン、キャラクター・デザインなど、映像以外の領域にも活動の幅を広げて注目されているクリエーターです。
パズルハウスでも、広告企画のWEBムービーなど、たくさんの映像の演出を手がけている常盤さんに、自身の活動についてお話をうかがいました。
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CDジャケットデザインとか、映像以外の仕事もやってますしね。でも、単に器用な何でも屋、という風に思われたら不本意だなあ。僕の芯にあるのは、やっぱり映画。子供の頃からとにかく映画に対しての興味は強くって、近くにあった映画館には散々通ったし、家で聴いてたのも映画のサントラばっかだった気がする。当時はベタにジョン・ウイリアムズ(スピルバーグ作品などで知られる作曲家)とかだけど(笑)。あとテレビで放送された映画を、音だけカセットテープに録音して、それを聴いてたりもした。ビデオなんて無かったから、音だけで映画を思い出すわけ。
― 脳内上映(笑)。
そうそう。すみからすみまで再現する。それって、図らずも作り手側の目線を追体験することでもあったわけです。いま思うと映像監督としてのいい基礎トレーニングになったんですよ、これが。映画文法が、誰に教わったわけでもないのに身についた。当時はもちろんそんなこと考えてやってたわけじゃないけど。それで、自分でも映画を作りたくなって、進学のときに「映画監督になる」って親父に言ったら、ビール瓶が飛んできて(笑)。堅気の勤め人になってほしかったんだろうな。反対を押し切って映画の専門学校に進学したんです。この学校で、後に自分が映像教えることになるんだけど(笑)。

― 通常は、学校を出て、いわゆる助監督経験などを積んでいく…という順番になりますよね。
僕は、助監督経験とか無しに、いきなり映画監督としてデビュー作品を撮っちゃったんです。「落下距離・百三十センチ・鳥」という長編で、プチョン国際映画祭の正式招待作品になったものです。学校にいたときには実習で映画を撮るんだけど、支給されるフィルムは数本分しかない。監督ができる人は限られるわけ。みんな監督やりたくて学校に来てるやつばかりだから、誰がやるかってのは大問題。今までで一番たくさん撮ったヤツだ!って当時の先生が言ってました(笑)。その時に思ったのは、「撮りたいと思う気持ちの純度」が大切だな、ということ。もちろんアイデアも重要なんだけど、その気持ちが強い人に周りは巻き込まれていく。お前とやりたい、って言わせるチカラ。クリエイティブのチームビルティングってこういうことなんだな、ということを学んだ。だから、監督デビュー作も、そうやって撮っちゃった。予算は無かったんだけど、役者やスタッフ、総勢100人の才能が集まってくれました。僕にあったのは、「撮りたいと思う気持ちの純度」だけ。そこに、お前とやりたい、という気持ちで手弁当で集まってくれたんです。うれしかったし、これは僕の自慢なんです。
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仕事として最初に世に出たのは、テレビの音楽番組のオープニング映像だったかな。学校を出てから、ミュージックビデオの制作会社にいて、テレビ番組づくりを手伝ってたんです。やってたのは何故か「音効さん」だったんだけど、制作現場の人や、出演者のミュージシャンのみなさんにかわいがってもらって、自分が企画するコーナーを番組中にもたせてもらったりして。勝手に番組オープニング映像をつくったら、おもしろいからっていうので採用されたりね。そうこうしてるうちに、僕の映画を観た人から声がかかるようになってきたんです。井上陽水さんのCDジャケットデザインのコンペに出ないか、と声がかかったりとか。
― デザインはやってなかったのでは?(笑)
声をかけられた僕が一番驚いた(笑)。映画を観て、こいつにやらせたらきっとおもしろいものが出来るに違いない、と思ったらしいんですね。デザインなんてやったことないから、どうしたものかなあ、と思ってまずはとにかく曲を何度も聴きました。そうしたら、あるストーリーが浮かんできた。映像ですね。映像がアタマに流れてきたんです。あ、この映像を平面に定着させればいいのかって。グラフィックデザインのプロがどういうやり方をするかはよくわからないけど、僕の場合は、やっぱり映像なんですよ。「森花処女林」という曲を聴いてたら、巨大な食蟲植物があって、そこに無数の蜂が吸い寄せられるようにおびき寄せられる、という映像が浮かんだ。それを定着させたデザイン、かなりエグイのでこれはダメだろうな、というのを出したら、陽水さんが気に入ってくれて採用になったんです。陽水さんはジャケットに関しては徹底的にこだわる人で、細かい指示があるのが普通らしいんですけど、この案については一言「もっとエグく!」という指示だけ(笑)。

― サザンオールスターズのドキュメンタリー(FILM KILLER STREET~Director's Cut~)は?
これも「落下距離・百三十センチ・鳥」を観て気に入ってくれた人がサザンオールスターズのスタッフにいて、今までのサザンオールスターズとは違ったことができるんじゃないか、というので声をかけてくれました。「KILLER STREET」は、2枚組30曲のアルバムで、サザンオールスターズが“枯れるまで曲を絞り出す”というコンセプトの元に生みだした作品だった。あれだけのビッグバンドが2枚組30曲の書き下ろしっていうのは、やはり普通ではない。ある意味で、バンドの活動のある意味での「区切り」になる作品なんだな、と直観しました。それで企画書をもって桑田さんのところへ行ったんです。よくあるメイキング映像みたいな軽いものではなく、ドキュメント・フイルムを作りたい、と。しかも第三者のナレーションが入って…といういわゆるドキュメンタリー番組の文法じゃなくて、映画のテンションで撮る。編集も、エフェクトは一切使わない。カットとフェードイン/アウトだけでいく。サザンオールスターズの「区切り」になる作品なんだとしたら、それは100年後にも残るものになるかもしれない。だから、後世からみて古くなるような「作り物」っぽさは排除するんだ、と。僕がカメラ持って、現場を歩き回って、サザンオールスターズの今をひたすら見ていく。僕の目にうつったそのままをやりたいんだ、と。
― まさか、ドキュメンタリーもこれが初めて?(笑)
そう、サザンオールスターズが初めて(笑)。そしてサザンオールスターズ自体も初ドキュメントだったそうです。これを作ってる間は、他に何もする気が起きなかった。ものすごく集中して作ったんです。昼間は撮る、バンドが寝る頃に自宅に帰って、それから次の朝までずっと編集。朝になるとまた撮りにいく。その繰り返し。ツアー中も全国同行しました。回しっぱなしだから、テープが250本くらいになったかな。見るだけでも1ヶ月かかる量ですよね。月に5回くらいしか風呂にはいらなかった。ムービーチェックで桑田さんの自宅にお邪魔したとき、桑田さんが「監督、風呂はいっていきなよ」って(笑)。
― ものすごい没入ぶりですね。
このフィルムがDVD作品として発売されたときは、サザンオールスターズのファンがとてもビックリしたんだそうです。長いファンでもこんなサザンオールスターズは見たことがなかったって。でもそのくらい近づかないと、バンドの真実を撮ることはできないのかもしれない。ドキュメントって、人間対人間の勝負なんだな、と。この仕事をやって、ぐっと自分のレベルが上がったという自覚があります。節目になった仕事のひとつです。そう考えると、僕は運がいいんだと思うな。いい仕事で声をかけてもらって、その現場で成長してきたんだな、と。
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もちろん事前に徹底的に考えますよ。設計は大切です。でも、徹底的に考えたあと、作りながらのプロセスで生じる閃きもあって、僕はそれを活かしていくほうが絶対におもしろくなると信じてるんです。映画「99%の自殺」も、重要なモチーフとしてクラゲの水槽が出てきます。これ、最初の脚本にはなかったんですね。作りながらのプロセスで閃いた。直観です。神が降りるってやつ(笑)。映画に限らず、僕は作りながらのプロセスで、場合によってはそれが撮影してる現場ということも多いんですが、そこでの直観をどんどん取り入れていきますね。アドリブ演出という感覚。
― 広告の仕事は、そういうことがやりにくいですよね。
事前に企画を固めてることが多いですからね。でも、現場でやってみて、あ、これはおもしろくないぞ、という気配がしたら、変えていく事も大事だと思います。パズルと協働した日産自動車の「あ、安部礼司」WEBムービーなんかは、ロケの途中でどんどんアイデアを進化させていきました。もちろん、広告主のマーケティングという大目的はあるわけで、アーティストエゴで言ってるんじゃないですよ。クライアントとの信頼関係があることが大前提です。広告の仕事も、最終的には人と人の信頼関係、というところに尽きるんじゃないかな。さっき話したけど、「これを撮りたいと思う気持ちの純度」の高さ、それが相手に伝播して、それで相手に「お前とやりたい」とどれだけ思ってもらえるか。そこを大切にしないといいものは作れないと思うんです。
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「夜のファミレス」
ベタだけど夜のファミレス。人がいない時間帯に、コーヒーを飲みながらアイデアを考える。よし、朝までにアイデアを出すぞ、っていう覚悟。店員から嫌な顔されるまで居たことも、けっこうありますよ。よく僕の席は寒くなりますからね(笑)。ということで、自分を追い込むときに、よくファミレスを使います。アイデアを考えるときは、徹底して“入り込む”。その数時間のテンションがとても好き。ものすごく忙しいほうが調子いいんですね、きっと(笑)。
― ありがとうございました。

1999年よりフリーの映像監督として活動。CM、PV、アニメーション、オープニング映像の演出をはじめ、井上陽水のCDなどジャケットのデザイン、キャラクター・デザインなどデザイナーとしても活動中。2005年には映画「落下距離・百三十センチ・鳥」で初の長編映画を監督。“第9回プチョン国際映画祭正式招待作品”に選ばれる。主な監督作品としてサザンオールスターズ『FILM KILLERSTREET(Director's Cut)』映画『99%の自殺』







